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コラージュ療法と箱庭療法 ブログトップ

コラージュ療法,マガジンピクチャー法とボックス法 [コラージュ療法と箱庭療法]

★最近,東京で主に臨床心理士を対象としたワークショップで「コラージュ療法入門」の講師を担当している森谷寛之先生(京都文教大学教授)の講座案内を眼にすることなりました.その講座の募集定員は確か20~30名,13時から18時までの実質5時間で受講料が20,000円という,プロセラピストまたはプロセラピストを目指す人向きの,ある研究所の講座案内の中にありました.

★森谷先生はその講座案内の中で「コラージュ療法入門―いろいろな誤解に答える-」と題し,「コラージュ療法は,台紙に雑誌やパンフレットなどの切り抜きを貼り付けるだけという非常に単純明快な方法であり,誰にも実践可能な方法ということができる.それは手続き上のことである.実際は,もっと繊細微妙な方法である.~
~これまでの様々な誤解を問題にしながら,(コラージュの)制作実習と基礎的な解説をしたい.そのために,切り抜いてもよい雑誌やパンフレットなどを何冊か持参して欲しい.コラージュ療法の活力は,この雑誌やパンフレットの内容に依存していることに注意してほしい.それ故に,この雑誌選びの段階からすでに研修が始まっていることを忘れないで頂きたい」と述べられていました.

★森谷先生は箱庭療法の代用として,つまり簡易箱庭療法という意味付けてコラージュ療法を始められたとのことで,箱庭療法のミニチュアに倣ってボックス法を採用されその有効性を主張してこられた方でした.

★その森谷先生がワークショップ「コラージュ療法入門」の受講生用の案内で,
「コラージュ療法の活力は,この雑誌やパンフレットの内容に依存していることに注意してほしい.それ故に,この雑誌選びの段階からすでに研修が始まっていることを忘れないで頂きたい」と述べられていることを,大変嬉しく思いました.

★私は私のオフィスでは,原則としてボックス法は採用していません.その主な理由は2つです.
 1つは,マガジンピクチャー法を採用すれば,コラージュの材料をクライエント側で準備することになるので,持参してきた雑誌類の種類などによってクライエントの日常生活の一端に触れる可能性が出てくる.そのクライエントの日常生活からの情報も,コラージュを投映法心理アセスメント的に利用する場合には重要な資料としての意味を持つということです.
 またもう1つの理由は,マガジンピクチャー法を採用すると,クライエントはセラピー以外の時間もコラージュ材料選びに費や必要が出てきます.このことはつまり,セラピー時間以外の時間をも,クライエント・セラピスト間における間接的セラピー時間としての意味合いを持たせることができるということになります.
 従って原則としてボックス法は採用していないのです.

★森谷先生のワークショップの受講生用案内の,「~この雑誌選びの段階からすでに研修が始まっていることを忘れないで頂きたい」は,私のオフィスで実践しているマガジンピクチャー法の意図と相通じるものがありました.

★実は関西大学主催で行われた日本心理臨床学会第24回全国大会で,森谷先生と私はボックス法とマガジンピクチャー法との有効性を巡って約10分間ほど,論戦を交えたことがありました.もちろん森谷先生はボックス法の有効性を主張され,私はマガジンピクチャー法の有効性を主張したのでした.その折りに私がマガジンピクチャー法の有効性主張の一環として挙げたのが,①不要の雑誌類をクライエント側が準備することの上記の意義,および②セラピー時間以外の時間をも,次回のセラピー時に用意する雑誌類選びに費やすことになることによる,実質セラピー時間の継続メリットの点でした.
※:その後,2009年に東京国際フォーラムで行われた日本心理臨床学会全国大会後の立食懇親会では,森谷先生と同じテーブルで30分ほど笑談しながらお寿司などを戴きましたがコラージュに関する話題は双方ともしませんでした.
※:ど~ゆ~訳かそのテーブルは,10人前くらいの(学会の懇親会としては)比較的豪華な握り寿司やオードブルが置かれていたのですが,そのテーブルで食べていたのは私と私の同行者,それに森谷先生の3人だけでした.お蔭で3人とも終わりの頃には「ちょっと食べ過ぎてしまいましたね」といった状態になってしまいました.



コラージュ療法の始まり [コラージュ療法と箱庭療法]

★コラージュ療法について著しているいくつかの書物によると,コラージュは1912年にピカソやブラックたちが始めたと記述しています.私も永い間,コラージュはピカソたちが始めたものだと思っていました.

★ところがある日,北米で暮らしネイティヴ・アメリカンの研究をされている方にお会いした時に偶然,コラージュが話題になりました.その方のお話では「ネイティヴ・アメリカンのある文化域の中に,少し大きめの布などに端切れ(端切れ売り場で売っているような端切れ布ではなく,幼い頃身にまとっていた衣類や日常生活で大切に使っていた布類)を貼り付けて,嫁ぐ娘や大切な人への贈り物にする習慣のところがあり,それはまさしくコラージュそのものです.そしてその習慣は16世紀頃から始められたようです」とのことでした.

★こうしてみるとコラージュの歴史は,思っていたより古いのかも知れません.

★心理アセスメントとしての「コラージュ技法」あるいは「コラージュ法」は,日本でコラージュが注目され始めるより10年以上も前から,アメリカやカナダの作業療法士たち,あるいはイギリスの家族療法や精神分析的心理療法などのセラピストたちによって行われてきました.

★この「コラージュ技法」あるいは「コラージュ法」と,日本で行われるようになった「コラージュ療法」との違いは,北米の作業療法士たちもイギリスのセラピストたちもコラージュを,「セラピーの一技法」として捉えるのではなく,「心理アセスメントの一技法」といった視点で捉え,日本のように継続して行うのではなく,必要な時にスポット的に行っているという点です.

★従ってコラージュ療法の第一人者として知られている近喰ふじ子先生のお話でも,「日本ではコラージュ療法として知られているが,諸外国では,コラージュ療法といっても通じない.『コラージュ技法』,『コラージュ法』で,心理療法における『心理アセスメント』の一手段である」とされています.

★日本で継続的なコラージュ療法として初めて行ったのは1987年,当時愛知医科大学助教授だった森谷寛之先生で,持ち運びが出来る箱庭療法という発想で始めたとのことです.
ただ1987年以前に,京都大学名誉教授の山中康裕先生の当時の患者さんが自主的にコラージュを創り始め,その回復過程を見守られたことがあるそうですし,山中先生と同様の経験を持つ精神科医師の先生方からの報告が他にもあります.

★ちなみに2004年に順天堂大学大学院ヘルスカウンセリング研究会の合宿研修会が一泊二日で行われました.講師の先生方の顔ぶれは,一日目の9時から12時までの担当講師が国立精神・神経センター精神保健研究所元所長で現在中部学院大学大学院教授の吉川武彦先生,13時から16時までの担当講師が私,翌二日目の9時から12時までの担当講師が順天堂大学大学院教授の大津一義先生でした.

★その折り吉川武彦先生とお話しする機会があったのですが,実は吉川先生は1980年頃に国立精神・神経センター精神保健研究所でコラージュ療法の研究をされたことがあったそうで,先生は精神科医師らしく「患者さんに選ばれて切り抜かれ,台紙に貼られたピースにではなく,選ばれずに残されたピースにこそ患者さんにとって意味があるのではないか」といった(抑圧論的)視点で研究を続けていらっしゃったとのことでした.

★という訳で日本のコラージュ療法の始まりは,1980年頃,国立精神・神経センター精神保健研究所での吉川先生のご研究か,京都大学名誉教授の山中先生のどちらか,ということのように思います.

★次の記事では,コラージュ創りと分析の基本について記してみたいと思います.

コラージュ療法と箱庭療法との違いについて [コラージュ療法と箱庭療法]

コラージュ療法と箱庭療法との違いを考えてみると,

①「コラージュ療法」は二次元的世界の表現法なので,三次元的世界の表現法である「箱庭療法」より,作者にとって「より豊かな表現」が可能になるといった特徴があります.

★書物によっては正反対の説明,「『箱庭療法』は三次元世界の表現法なのに対し,『コラージュ療法』は二次元世界の表現法なので,『箱庭療法』による表現に比べて『コラージュ療法』による表現には限界がある」としているものもあります.

★ただ「箱庭療法」では,例えば大宇宙を表現しきれないとか,海底を表現しきれないとか,あるいは幽霊のような? 半透明なもの(幽霊の存在の有無,および幽霊が半透明かどうかといったことについては,私は責任を負いかねます)を表現しきれないといった制約があるのに対して,「コラージュ療法」はそのような制約がほとんどない,といったことなどから,そのような見解には同意できませんし,実務上も「コラージュ療法」の方が表現豊かな作品が多く見受けられます.

②作品を作者とセラピストとが分析検討する段階で,「コラージュ療法」の方が「箱庭療法」に比べ,「空間象徴を利用した分析法」を試みる際に「より有効」な分析を可能にできるという特徴があります.

★「コラージュ療法」はほぼいつも一定の位置から作成されるのに対して,「箱庭療法」は選びに行ったミニチュアの置き場所からの戻りついでに戻って来た場所からも作成される場合が出てきて,作者の作成位置が定まらないことがあるからです.「空間象徴を利用した分析法」は作者の位置と作品との関係が重要ですので,「コラージュ療法」の方が分析できやすくなるのです.

③ミニチュアなどの材料を施設側で揃える「箱庭療法」からは,作者の日常生活上の情報を得ることはなかなか出来ませんが,材料を作者に持参して頂くことが出来る「コラージュ療法」では,その材料から作者の日常生活上の情報を得やすくなる,といったことが挙げられます.

④「コラージュ療法」はそのまま現物作品が記録として残されますが,「箱庭療法」はビデオや写真のような記録媒体の中にしか残せません.全く残せないよりは良いと思いますが,やはり実物を残すことが出来る「コラージュ療法」の方が,継続的に用いるセラピーなどでは「箱庭療法」より使いやすいのです.

⑤森谷寛之先生の指摘のように,「箱庭療法」は訪問セラピーでは使えませんが,「コラージュ療法」は使えます.

⑥「箱庭療法」が充分役割を果たすだけのミニチュアを揃えるとすると,軽く100万円以上かかりますが,「コラージュ療法」はほとんど設備費がかかりません.

 ・・・といった,6つの点ではないかと思います.

★以上の6点を挙げてみると,全て「コラージュ療法」の方が「箱庭療法」より優れているのではないか,といった挙げ方になってしまいましたので,何とか「箱庭療法」が「コラージュ療法」より優れている点をと探してみることにしました

★その結果見つかったのが,「コラージュ療法」は刃物を使いますので,刃物を使うことが危険なレベルの幼児などに用いる場合は,「箱庭療法」の方が安全,という点でした.

★箱庭療法を専門にしている方々からは,異論反論があるかも知れませんが.

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