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認知行動療法演習セミナー 《ソクラテス式問答法=ソクラテス的質問法》 [認知行動療法セミナー]

★ボストン大学の職員で,日本を含む各国からの留学生を対象とした語学指導や就学相談を職掌にしている人に,S.ビックリさんという方がいます.ビックリさんはボストン大学内での学生を対象にした仕事だけではなく,時々来日して早稲田大学や中央大学の学生・大学院生を対象にしたボストン大学留学のための講演や,相談業務なども担当されています.
 ※:S.は名前の頭文字ですが,ビックリは私が彼女に付けたニックネームです.彼女の来日時,香取神宮に案内した折りに本殿の賽銭箱の前で,財布の中から,まるで力士が土俵脇にある塩を掴み取るような自然に流れる仕草で硬貨を取り出すと,ジャラジャラっと投げ入れたのです.そのジャラジャラ音は1円玉のような軽々しい音色ではなく,もっと重々しい音を出す複数の硬貨を投げ入れた時の重奏な? 響きでした.
 敬虔なクリスチャンと思っていた彼女のこの行為に私はもう,ビックリ!
 そこで彼女の姓の頭文字,Vに続けてビックリと名付けたのでした.
 ちなみに私の硬貨が賽銭箱に入った時の音色は,チャリ~ンでした.ワンコインの,澄んだ音色もまた格別に良いものですよね!

★そのビックリさんに,私のラボの,非常に非常に少ない常勤臨床心理士スタッフと連名で,日本人にはなじみの薄い,それでいて認知行動療法の教材では頻繁に触れられる「ソクラテス的質問法」について,確認の問い合わせをしてみました.
 問い合わせの要旨は,
 「ソクラテス的質問法」を知っていますか?
 知っている場合,「『ソクラテス的質問法』は,アメリカの教育界などではどのように認識されていますか?」という点についてでした.
 以下,ビックリさんから受け取った回答をご紹介させて頂きます.

     *****     *****     *****
★二人からの質問,とっても興味深かったです!
  「ソクラテス的質問」というのは,よく識っています.ただ,欧米の教育界などでは通常「ソクラテス式問答法(the Socratic method)」という用語が使われます.この方法は,欧米の教授・教育理論の核になるものです.
 学生は,先生から与えられる知識や情報からではなく,討論したり先生からの質問に応えようと奮闘することを通して学ぶもの,とされています.
 私も,そして私の同僚も皆,どの授業でも使っています.「さあ,これからソクラテス式問答法を使おう」などと考えることなく,自然に使われています.というのも,それが欧米教育において学ぶということの根本,つまり,人は理解に至るための奮闘・努力の過程からこそ学ぶものと考えているからです.
 ※:(the Socratic method)は,研究社の英語の辞書では,「(ソクラテス式の)問答教授法」と訳されて載っています.また,「ソクラテス式問答法〔弁証法〕」と訳している辞書もあります.

★実際,私のボストン大学のセンターではアメリカの教育方法について,特に非欧米システムで学んだ学生向けに多くのオリエンテーションを行っています.授業の進め方が,それまで馴染んできたものと余りにも違っているからです.アメリカのシステム(つまり,ソクラテス式問答法を教授・教育理論の核として捉え,その前提に立って進められる授業)の中で勉強し上手にやっていくには,先生の質問に応え,自分で答えを見つけていく過程を通して学ばなくてはなりません.

★特にアジアの学生は,討論に参加したり,リスクを負ったり,時には答えを間違えることに慣れていないので,これは結構大変です.

★昨日も早稲田大学からの女子留学生の一人と,この件で話をしたばかりです.彼女はボストン大学でのコースを7週間終えた今では,参加しながら受ける授業にも馴染めるようになり,勉強がはかどってきているとのことでした.

★その女子留学生は,「それでもとてもハードに感じています,というのも自分の知識が十分ではないと思えるからです」とのことでした(彼女は,アメリカの学生も必ずしも十分な知識があるという訳ではないことを理解し始めています.もっともアメリカの学生たち自身は4~5才の頃からこの方法で学んできたので,それで良しとしています).

★私は,日本の大学で1年間教えたボストン大学経営学部の教授が何年か前に言っていた言葉を引用して,「日本の教育システムではもっぱら,『学生に答えと深い知識を与えることが全て』であり,アメリカの教育システムでは『質問をして学生自身に更なる疑問・質問を促し,学生自身が答えを見出す機会を与えること』です」と説明しています.

★セラピストとも親しくしていますので,セラピーにどう当てはめるかも大体分かります.「つまり,セラピストは道案内的な質問をして(時には何年間も!),クライエントに自分の課題を理解し,その解決の仕方を見つけてもらうということ」のように思います.

★最小限,以上が「ソクラテス式問答法」の意図するところのようにと思います.しかし完璧なものなどはありません.もちろん,教育の場でも然りです.

★講義形式の授業もたくさんあり,そこでは先生は立ち上がって話をするだけで,学生はもっぱら与えられた情報を覚えることを期待されます.けれども,どのコースにも(ボストン大学では,というよりもアメリカの全ての大学といって間違いないのですが),何らかの討論形式で構成された授業が必ずあります(早稲田大学や大学院からの留学生たちが,皆嫌っているものです.が,それが人生というもの! でしょう)
 いずれにしても,頂いた質問についての情報は,こんなところで,いかがでしょうか?
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★S.ビックリさんからの返事のご紹介,お役に立ちましたでしょうか?
 彼女はこの夏も来日して,ボストン大学留学希望者のために中央大学(多分,早稲田大学へも,と思いますが,今年はまだ早稲田大学はどうか分かりません)で講演などをすることになっているはずです.
 ボストン大学への留学を志している方は,ご一報頂いても構いません(多分……).

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認知行動療法演習セミナー [認知行動療法セミナー]

★今,私が講師を担当している認知行動療法セミナーは,毎回,まずアメリカ心理学会(APA)がアメリカの大学院生教育用に制作した心理療法ビデオシリーズの中から,「うつ病のための認知行動療法DVDシリーズ全5巻」を毎回1巻ずつ視聴します(但し全部で5回のセミナーではなく,最後に総復習・振り返りの会がありますので全6回,合計実質33時間のセミナーです).
 そして補充解説をしたり質問を受けたりした上で,私のラボで準備した「注意・要領入り逐語記録(セラピストとクライエントとの逐語記録の中に,要注意点,例えば“ここでは具体的・特徴的な状況に焦点を当てるよう心がける”とか,“ここではソクラテス的設問法を用いるよう心がける”,あるいは“ここでは思考記録表に記入することを勧める”といったような,ヒントになるものを入れたもの)」を使ってロールプレイを繰り返しています.

★これは数年前,やはり私が講師を担当して同上DVDシリーズを使って行った認知行動療法セミナーの時に,受講して下さった多くの方々から頂いた感想文が参考になっています.
 つまり「理論的なことを頭で理解するだけなら,本を読むことによって十分な学習ができます.私たちに必要なセミナーとは,理論を頭で理解するためにではなく,ロールプレイなどによって体感的・実感的に理解できるようになるような,演習・実習中心のセミナーです」というものでした.

★そこで今回のセミナーでは,当時は準備していなかった「注意・要領入り逐語記録」を作成しました.そしてDVD視聴研修が終わった直後に3人一組で,「注意・要領入り逐語記録」に従ってロールプレイを3回ずつ繰り返して頂き,ポイントを体感的・実感的に理解できるような演習法を採用することにしました.

★認知行動療法は来談者中心療法や芸術療法と違い,クライエントとセラピストとの関係が構造化されています.従ってセラピストはまず何より,いつ,どのような状況の時に,どのような対応を心がけるべきかといった手法を身につける必要が出てきます.
 そのためには複数ケースの逐語記録などによってその時々の状況に合わせた対応法を学ぼうとするよりも,1つのケースで徹底的に繰り返してロールプレイを行った方が,確実に対応法が身につけられるはず,という考えによるものです.
 何事も,「基本を徹底的に身につけることが一番大切!」という考えによるものです.

★私のラボでの最近約10年を振り返ってみると,精神科クリニックでうつ病の診断を受けたクライエントの方に認知行動療法を用いる割合は約20%くらいです.適応障害・不安障害・摂食障害など,その他の方々で約30%くらいです.
 つまり私のラボでは,70%~80%のクライエントの方々には,創作コラージュ療法などを用いたクリエイティヴ・セラピーによって対応させて頂いていますが,「コラージュのような女々しいこと,俺にはできん(ある高齢男性クライエントの方の言葉)」とおっしゃる方や,強固な合理主義者のような方,多弁型の方には認知行動療法は確かに有効で,用い続けています.

★ただ最近ある全国紙に,「認知行動療法を正しく使えるセラピストは,全国でも数百人しかいない」といった記事が掲載されていました.
 この「全国でも数百人しかいない」という話は,いったいどなたがおっしゃった話なのでしょうか?

★その昔,あるコラージュ療法の研究会で時々コメンテーター役をされていた方が,「日本で本当にコラージュを分析できる人は,○○先生と△△先生,◇◇さんと××さんと私の5人しかいません」と豪語しておられました.
 その方がコメンテーターの時,しばしばフロアーの参加者たちに向かって「このコラージュのこの部分の切り抜き写真,良く覚えておいて下さいね.きっと,先の方で作るコラージュでも出てきますからね」と指摘され,その数枚後のコラージュ作品解説の時,「ほ~ら,言った通り,同じ写真が出てきたでしょう?」といった展開になって評判の方でした.
 ある日,私の知人がその研究会で,評判のその方にコメンテーターをお願いしました.
 その方は私の知人に,“研究会の前に,コメント対象になる作品を全部見せるように”との連絡をされてきました.
 私の知人は,「な~んだ,前もってコラージュを見て知っていた上で,あんなことを言っていたのか」ということになって,非常に落胆することになりました.

★このコメンテーターの方の「日本中に5人しかいない」と豪語した話は余談ですが,いくらセラピーの世界は狭いといっても,特定のセラピストが日本中のセラピストの詳細について知っているはずがありません.
 このような推定は誤解を産みやすいものです.できれば遠慮して頂きたいものだと思いました.


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